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2017年01月17日

絵本『ネコヅメのよる』、いろいろ。

白木絵本『ネコヅメのよる』が好調。


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『ネコヅメのよる』(WAVE出版)絶賛発売中!


発売は2016年の5月。
特に話題の本ってわけでもなかったから、
今ごろはみんなに忘れられていてもおかしくないのに、
置いて下さる書店さんや、
手にとってくれるお客さんや、
ツイッターやブログに感想を書いてくれる読者のかたが
途切れずに居て下さるおかげで今があります!


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「ありがっとぉーっ!」


昨年の終わり、
もうそろそろ売上も落ちてくるよね〜・・・というころ。


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「ついにここまでか……」



静岡書店大賞の児童書新作部門第三位に
『ネコヅメのよる』が選ばれて、
12月6日に授賞式に行ってきました!


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お留守番スイッチ、ぽちっ


静岡県人心をくすぐる何かがあった………
のかどうかはわからないけれど、
嬉しい嬉しい「寝耳に水」でした。
静岡サイコー!


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「すぐ乗せるよね…」


静岡書店大賞」は今回が5回目。
映像化したい文庫部門と
小説部門と
児童書名作部門と
児童書新作部門が。

それぞれの部門、大賞しか発表されないのだけど、
児童書新作部門だけは3位まで発表とな!
白木、ギリギリセーフで恩恵にあずかりました。


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お土産は静岡書店大賞のピンバッヂ


1位と2位は
今をときめくヨシタケシンスケさん。
1位ヨシタケシンスケ、2位ヨシタケシンスケ、ときて
3位白木ピッピ(対外的には町田尚子だけど)。
凄いじゃありませんか!

副賞に木村飲料さんの
サイダー詰め合わせセットをいただきました。


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ラベルがかわいい!


WAVE出版のみなさまと分け合いまして、
飲むのに勇気が必要な「うなぎコーラ」は
出版社のかたに飲んでいただきました。
(なかなか美味しかったそうです!)

わたしは、「富士山サイダー」をいただきました。
いつか「日本一」になった時に飲もう!!
なんて言ってたら一生飲めなさそうだけど。


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静岡のみなさま、ありがとうございました!!



そして、そして。
年が明けて、1月12日には
MOE絵本屋さん大賞の贈賞式へ。
『ネコヅメのよる』は第6位。
ビミョーな順位。。。


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「チーン・・・」


というのも、
以前『いるの いないの』で3位になった際、
「書店さんが絵本屋さん大賞フェアをやってくれるので
5位までは売れますよ!」と言われたことが思い起こされ、
「5位だったら売れたのに………」
「6位じゃ意味無いじゃん………」
と残念で残念で・・・。


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ふて寝?


でもでもでも
今回からは10位まで贈賞式に呼ばれ、
10位まで表彰され、
10位まで盾もいただけたのです!
なにより、
10位まで書店さんのフェアに入れてもらえることに!

もぉ〜、早く言ってよぉ〜。
それだったら全然6位でもいいっ!
嬉しいっ!
白木、よくがんばった!!


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静岡にもMOE絵本屋さん大賞にも同行してくれた
お股白木ブローチはフェルト作家のハスナゴちゃん



ちなみに、
こちらの1位2位も
静岡書店大賞と同じヨシタケシンスケさん。
強い。

そんなわけで、
現在、書店に『ネコヅメのよる』が置いてある率は
高いんじゃないかと。
ぜひぜひ手にとって見ていたきたいです。


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足じゃなくて手にとって!


2月には「猫の日」があるので、
猫っぽくはない白木だけど
なんとか猫本フェアに侵入して
もう少しがんばってもらいたい!(切望)



ところで、
表紙の白木についてなのだけど、
「指が5本に見える」との噂が…。


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確かに。。。


この表紙を描くために見た白木の写真がコチラ

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指が5本 に見えなくもないし、
爪が指又から生えてる みたいに見えなくもない。

たしかコレを描いてる時に
指が5本に見えるけどいいのか?とか
爪ってこんなところから生えてるっけ?と疑問に思って
白木の手を確認した気がする。
前脚の指は4本(+親指1本)だけど、
5本に見えたりすることもあるのか〜、
じゃあまぁいっか、このまま描いちゃえ、
と思ったんだろう。

もしかしたら白木が特殊なのか?!


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「白玉バーガー」


指が5本に見えるかもしれないけど、
白木は「ヘミングウェイ・キャット」ではありません。
※ヘミングウェイ・キャットとは、
前肢の指が6本ずつある多指症の猫を文豪ヘミングウェイが飼っていたことから、
多指症の猫を「ヘミングウェイ・キャット」と呼ぶことがあるそうです。
「幸運をもたらす猫」とも言われてるとか。



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「ざんね〜ん」


ちなみに、
ブックデザインをしてくれた
大島依提亜さんちのひゃっこちゃんは
ヘミングウェイ・キャットです。
初めての猫がひゃっこちゃんだった大島さんは、
他の猫を見て
「指が一本足りなくて可哀想に」と思ってたとか…。



あと、もう一個。
「わあ!でた!」のページで
「猫の瞳孔が細くなるのはおかしい」というご指摘。
その通り!!
猫は暗いところでは瞳孔が大きく(つまり黒めがちに)なります。
最初、わたしもそれにとらわれていたのだけど、
それだとどうも「びっくり!」感がでなくて。
それで、最後の最後に全員(二匹を除いて)の黒目を
細く描き変えたのでした。
そのほうが、ページをめくった時に効果的だと判断して。

「月の光ごときでは瞳孔は細くならない」けど、
「あれは月じゃなくてネコヅメだもの」
「ネコヅメの明かりは月光よりも凄いのだ!」
と言えるしなーと思ったし。
まぁそこはファンタジーと思ってもらえれば幸いです。


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「よろすく!」


『ネコヅメのよる』、
じわじわとがんばってます。
白木ももうすぐ16歳。
じわじわとゆっくり生きています。


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「寝てるが勝ち」(白木格言)


どちらもゆるやかに長く
そこに居て欲しいと願います。


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ね!

ラベル:絵本
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2016年05月29日

絵本『ネコヅメのよる』


ついに出ました『ネコヅメのよる』(WAVE出版)!!
いままでも、絵本や挿絵に
ちょいちょい白木を忍び込ませることはあったけど
(というかほぼ毎回描いてたけど)
まさか、まさか、
白木のことを堂々と描く日がくるとは!

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ブログやインスタで人気の猫さん達が
雑誌で特集されたり、
写真集が発売されたりしてるのをみて
正直「いいなぁ……」と思っていた。

でも、白木なんて絵本よ!絵本!
自分家の、
しかもまだ生きてるコの!

もしかしたら写真集を出すよりハードル高いかも?

たしか、某グラビア癒し系アイドルが
自分と飼い犬の物語を絵本にしたことがあったはず…
あれは彼女の人気があったから成立したハナシで。
白木絵本(ネコヅメのよる)は、
描く側の人間も、出て来る猫も無名なのに、
出版できたっていうのは奇跡か!
奇跡だ!

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さて、
どうしてこんな絵本が出版できちゃったのか。
それは、遡ること3年ほどまえ、
ミロコマチコさんの
絵本『てつぞうはね』が発売された頃のこと。

ミロコマチコさんの『てつぞうはね』は
今は亡き愛猫てつぞうのことを描いた絵本で、
「情熱大陸」でも紹介されて大ヒット!

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これがとってもいい絵本だったもので、
猫と暮らしている絵描きたちが
それぞれ自分ちの猫を主人公にして
「白木はね」とか「ニャンキチはね」とかを描いて
「てつぞうはね」シリーズを出そう!
と100%冗談で言っていた。

で、そのミロコマチコさんのデビュー作、
『オオカミがとぶひ』の担当編集者が
このたび、白木絵本を描かせてくれた
野分編集室の筒井さん。

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筒井さんも最初は
「“白木はね”、いいですね」と冗談で言っていて、
「タイトルはミロコさんに書いてもらいましょう」
とわたしも冗談で返事していた。

そんなのがしばらく続いてたある日。
「“白木はね”、そろそろ本気でやりませんか?」
と筒井さんが言った。

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マジですか?


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そう言われても、
わたしは物語を書けない(書きたくない)。
白木にまつわるイイ話なんてひとつも無い。

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ちょうどその時、製作中の絵があった。
飯舘村の壊れたビニールハウスの中で
咲き乱れるオオイヌフグリ。
そこに猫まる猫達の絵。

そのシーンがヤマになるような絵本なら描きたい、
そう思った。

結局、ビニールハウスは無くなったんだけど。

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「ネコヅメのよる」のストーリは
たいしたものではない。
あらすじを書くと
それはそのまま本筋になってしまう。

正直、わたしはネタバレに関しては
さほど気にしてないのだけれど、
(タイトルからしてネタバレ…と言われてるし)
でも、「初めて読む人だけが味わえる感情」というのも
確かにあると思うので。

なので、もったいぶってるわけじゃなくて
詳しくは書かないことに。

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文章量は少ないとはいえ、
今回も「絵本の考えかた」を学んだ。

昨年出版された『さくらいろのりゅう』の時と
まったく違うアプローチの考え方だった。

『さくらいろのりゅう』の担当編集ユアサさんには
アカデミックな絵本の作り方を教えて頂いた。
お話作りに関して素人同然のわたしに、
それこそ準備体操の仕方から、
丁寧に、根気よく、順を追って教えて下さった。

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筒井さんは、
どちらかと言うと「あまり考えないように」というか、
脳ではないところで
物語を“感じる”ように促してくれた。

筒井さんのアプローチに
なんとか乗っていけたのは、
ユアサさんに基礎体力をつけてもらっていたから。
わたしにとって、
「ユアサさんからの筒井さん」というコースは、
最高の流れだったように思う。

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『さくらいろのりゅう』と『ネコヅメのよる』の
制作過程には共通点があって、
どちらも、物語を作ってからラフを描き、
その後にまた物語を作り直していく、
という過程があった。

文を絵にした後、
絵にした文を捨てて、
新たな文を書く、みたいな感じ。

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そして、
両編集者には「言うことが的確」という共通点が。

何度もダメ出しして
何度も描き直させることが
「一緒に作品を作ること」や
「熱意のある編集者」ではない。

ダメ出しするなら、
それは「的確」であってほしい。
そのぐらいの緊張感をもって言葉にしてほしい。

それが的確なダメだしだった場合、
落ち込むことはない。
逆に「そうか!」と目から鱗が落ちる。


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絵本制作は、
ラフのOKがもらえたら
描き終わるまでは、基本的に一人旅になる。
わたしはそれが好きだ。
放っておいてもらえるということは、
信用してもらえてるということ。
忘れられてるということではない、決して。

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その証拠に
一人旅の途中で迷うことがあって、
「こっちとこっち、どっちがいいでしょう?」とか
「これ、どう思います?」とかを
ある日突然投げかけても、すぐに答えが帰ってくる。

「こっちにしましょう」
「それでいいと思います」

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だからわたしは、
一人旅を満喫しながらも
独りじゃないという安心感をもって
絵本を描くことができる。

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ふたつの異なった、
そしてとても勉強になるアプローチで
作絵の絵本を描かせてもらったのだから、
次からはスイスイ作れる!・・・かというと
全然そんなことはなく。

「身につく」ところまで到達していないのだな。
残念なことよ。

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こういうことを
何度も何度も繰り返していって
そしてやっと身につくのだろうな、とは思う。
思うけど、
絵本を一冊描ききるごとに、
もう搾りかすさえ残ってません……
な気持ちになるのもホント。

描きたい物語がつぎつぎに溢れ出て来るタイプではなく、
イチから井戸を掘らないとならないタイプ。
まずは水脈をさがすところから…なのだ。

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そうそう、
『ネコヅメのよる』制作メンバーは
とっても猫猫しい方々でした。

プリンティングディレクターの高蛯ウんは
ミルクちゃんという猫と暮らしている。
ある日、高蛯ウんの家の裏に捨てられていたのを
拾ったんだそうだ。

デザイナーの大島依提亜さんは
オッドアイで6本指のひゃっこさんという
妖精のような猫と暮らしている。

そのせいか、初めて原画を見てもらった時、
なんだか普通の現場と違う反応が…。

打ち合わせのちょっとした間に、
白木のアップのページをじーっと見ていた高蛯ウんが
「かわいいなぁ…」と小さな声でつぶやいていたり。

紙の説明をするときに
「猫が爪でクッてやりたくなるような紙」と大島さん。
紙選びも猫目線だったり。

帯を誰に書いてもらうかという話になり、
筒井さんがイタコになって
「白木に書いてもらおう」ということになったり。

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ああ、なんてこった・・・

みんな 変で
みんな いい。

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筒井さん家にはまだ猫がいないけど、
近いうちに猫がやってくるんではないか…
そうだといいな…と勝手に思っている。

WAVE出版のハマモトさん家は犬だけど、
WAVE出版では猫本をいろいろ出していて、
サイン本を作りにいった時に
『店主は、猫』という台湾の看板猫本をいただいた。

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『ネコヅメのよる』は
その道のプロの方々で、
しかも猫好き動物好きの方々とつくることが出来て、
すごく幸せだった。
「絵本」よりもう一段別の何かに(ナニに?)
なったような気さえする。

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この流れで
この時期に
この人達と作れて
本当にほんとーに幸せ。

ね、白木!

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ワンワン!


『ネコヅメのよる』
 
町田尚子/著
1400円+税
WAVE出版


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2015年12月20日

絵本『だれのものでもない岩鼻の灯台』発売

12月。
季節は冬。

そんな時季に出る新刊絵本、
『だれのものでもない岩鼻の灯台』。
灯台が主人公の絵本です。

シチュエーションは海だし、
夏に出したほうがよかったのだろうけど、
まぁなんやかんやで冬にズレこみました……。


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山下先生と初めてご一緒したのは、
『うらしまたろう』。
(日本の昔話えほん 6 /あかね書房)

その前に描いた絵本でイロイロあって
絵本がヤになっていたわたしに、
「好きなように描きなさい」
「一枚一枚自分の作品だと思って描きなさい」
と山下先生は言って下さった。

どれほど心強かったか。
どれほど励まされたか。

『うらしまたろう』を描くことで
「絵本って楽しいかも」と思えたのだった。


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あれから約5年。

『だれのものでもない岩鼻の灯台』のラフを見て、
「これでいいよ。まかせるよ」と山下先生。
それから、つづけてこうおっしゃった。
「あなたは絵がうまいっていうのはもう知ってるから。
だから、今回は肩の力を抜いて描いてごらんなさい」




『あずきとぎ』と『さくらいろのりゅう』を描き終えて、
この先におとずれるであろう
「息苦しさ」の予感があった。

このままいったら
近いうちに行き詰まるに違いない。
自分の絵に飽きる予感、とでも言えばいいのか…。

それでも、
わたしに仕事の依頼を下さる方々は
『いるの いないの』を見て、
あるは他の既刊本を見て、
依頼して下さる。

口に出して言わなくても
「こういう感じで…」
とイメージされているだろう。
期待されているのだろう。

この先ずっと
この絵で答えていかなければいけないのだろうか。

それっとどうなんだろうか。

やっていけるだろうか。


そんなことを考えてる頃だったのだ。

山下先生は何でもお見通しなのだな・・・。


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先生が指摘した通り
「肩の力を抜いて」描けたらどんなにいいだろう。

でも、
「そうですか!
じゃあ肩の力を抜いて描きますね!」
と言えるような簡単な課題ではない。

だって、肩の力を抜いて描いた絵が
どんな絵なのかわからないし、
だいたい、
どうやって肩の力を抜いたらいいのか
全然わからない……。

先生は
「何年かかってもいいよ」
とおっしゃった。
この課題が難しいことをご承知なのだ。



嬉しい。
けど、困った。

どうしよう。

肩の力を抜いて描くにはいったい……。



どうしていいかわからないから、
とりあえず画材屋で
今まで使ったことのない紙など、
新しい素材を買ってきた。

一ヶ月ぐらい、
あれこれやってみた。

画材を変えたら
そりゃあ絵の雰囲気は変わる。
当然だ。

でも
先生のおっしゃったことは
こんな簡単なことではないはず。
もしこれでいいのなら
「今回は画材を変えてみたら?」
と言えばすむことだし。

そうじゃない。
もっと根本的なことなのだ。

うーん困った・・・。


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先生は「何年かかってもいい」
とおっしゃってくださったけど、
出版社のほうは
「夏発売予定」を「秋発売予定」に
変更してくれただけだったし、
編集者からも、
「どうですか?」
という電話が何度となくかかってきたし…。

まぁね。
会社だから仕方ないのかな。。。



時間は気にせずやってみなさい、と言う山下先生と、
早く早くとにかく早く、という出版社に挟まれ、
どうしようかなー……
と途方にくれていた時、
第二の救世主(?)某さんがわたしに言った。
「いいじゃないですか、がっかりさせちゃえば」


わたしは期待に答えよう、答えたい、
とばかり思っていた。
依頼してくれたヒト達の
期待に答えねばと思っていた。
いままでの絵をイイと言ってくれた読者の人達を
がっかりさせてはイケナイと思っていた。

山下先生はそれを察知された。
だから、
「肩の力を抜いて」
と言って下さった。

先生がせっかくそう言って下さったのに、
それでもまだ、
今までの「評価」を守ろうとしていた。

そんなわたしの背中をやさしく押すのではなく、
力いっぱい突き飛ばしてくれたのが某さんの言葉。
「がっかりさせちゃえばいいじゃないですか」


そうか。。。。
がっかりさせちゃえばいいのか。
編集者も読者も
みんながっかりさせちゃって・・・・
そうかそうか。
もういいや。
なにを言われてもいいや!!



なんだかそれでふっきれて、
そこから一気に描くことが出来た。


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高校野球で、
初めて甲子園のマウンドに立って、
緊張して堅くなってるピッチャーのことを
「腕が振れてないですねー」
なんて言うけれど、
まさに、わたしはそんな感じだったのだ。


山下先生と、
「がっかりさせちゃえ」と言ってくれた某さんのおかげで、
この絵本が完成したと言っても過言ではない。


絵を描くのが楽しかった。



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仕上がった絵を見た山下先生は、
とっても喜んで下さった。
ちっともがっかりなどしなかった!!!


色校は初校のみという方針だった出版社が、
色がちゃんと出るまで色校を出す、
という方針に変えてくれたのも
山下先生の鶴の一声のおかげ。



そして、ここから先は
デザイナー椎名麻美さんの出番!

今迄のこのシリーズでは(一応「子どもたちへ」というシリーズの中の一冊)
一度の色校正でOKだったんだろうに、
いきなり細かい指示を出されて
印刷所の方々もびっくりしたと思う。

それでも
椎名さんが丁寧に説明してくれて、
印刷所の人もそれに答えようとしてくださった。

何度も印刷所に通って
データ作成の人と話をしてくれて、
最終的には刷りの現場にも立ち会ってくれた
椎名さんに感謝!!

色校正をきちんと見られるデザイナーって
実はあまりいない。
「原画通りに」とか「鮮やかに」とか
そんな程度の赤字しか入れられない人が多い。
違うんだよー。

スキャニング、オペレーション、面付け、刷り順、
その他もろもろ、
どこに問題(の可能性)があるのかを探る、
今回もまた椎名さんの
豊富な経験と知識を見させていただいた。


おかげさまで
キレイな本に仕上がりました!!


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最終的に特色プラスしたり、
何度も色校正を出したり、
今までより経費がかかることを許して下さった
絵本塾出版様にも感謝。
ありがとうございました!!



そんなこんなで、
途中イロイロあったけど、
わたしにとっては
大事な絵本となりました。


部数が少ないので
店頭で見かけることはないかもしれません。
図書館には入るかな〜。どうかな〜。
今までの絵と違うから
ホントにがっかりするかもしれないので、
ネット書店で買われるのは
どうかなぁ…不安だなぁ…
と、ちょっと思うのですが。。。
どこかで見かけたら
手にとってみてください。

念のため。
猫はちょこっと出て来ますが
猫度は低いです。
白木は・・・います。

宜しくお願い致します。


『だれのものでもない岩鼻の灯台』
山下明生/文 町田尚子/絵
絵本塾出版


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余談だけれど、、、
色校正の際、わたしも一度だけ印刷所まで行った。
精も根も尽き果てるぐらいに疲れ果て、
途中、「来客用」として置いてあった
インスタントコーヒーをいただくことに。
お湯で溶くタイプのアレ。
インスタントコーヒーを飲むのなんて
何十年ぶり?!
クリームはもちろん粉末のアレ。
いつもは入れない砂糖もたっぷり入れて。
そのコーヒーの美味いこと、美味いこと。
泣けたわ〜。
「しみるね〜」と椎名さんと言い合った。
今まで飲んだコーヒーの中で
一番美味しかったかもしれない…。
この絵本を見るたびに
あのコーヒーの味を思い出すんだろうな〜。

(おわり)


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2015年03月13日

絵本 さくらいろのりゅう


絵本『さくらいろのりゅう』(アリス館)が
発売されました。

長い道のりだった・・・

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2011年、アリス館の編集Yさんのところへ
作品の持ち込みに行ったのは
震災の一ヶ月ほど前のことだった。
このころ、
本当になんにも仕事がなくて
いろんな人にお願いして
編集のかたを紹介していただき
持ち込みにまわっていたのだった。

東日本大震災がおきた翌月ぐらいに
岩崎書店のHさんのところへ持ち込みにいき、
運良く『いるの いないの』を描かせて頂き、
2012年に出版された。

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『いるの いないの』が話題になったので、
「これでどんどん仕事がくるね!」
なんていうまわりからの言葉とはうらはらに
新たな仕事依頼はまったくこなかった。

また何も仕事のない日が続いていた。

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そんな時
Yさんからメールが届いた。
『いるの いないの』を送ったことに対する
お礼のメールだった。

Yさんは、その時産休中とのことだった。
「職場復帰予定はまだ先なのだけど
打ち合わせなどは出来るので、
会ってお話しませんか?」

2012年4月、水道橋駅前のカフェで
Yさんにお会いした。

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「絵本」は描いてみたいかもしれないけれど(まだ曖昧)
でもお話は書けないし、書きたくもない」
と持ち込みの時にわたしが言っていたのを
覚えていて下さったYさんは、
「お話を書くことは一旦置いておきましょう」
「テーマみたいなものをひとつ決めて
そこからイメージした絵を何枚か描いてみましょう」
「何枚か絵がたまったところで
どなたかに文章を書いてもらうことも出来ますよ」
たしか、そのようなことを言われた気がする。

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絵ならいくらでも描ける。

テーマは「夜」(「夜にやりたいこと」だったっけかな…)

二ヶ月後ぐらいに会う約束をして、
その時までに絵を一枚描いて来る。

それを何度か繰り返した。

途中、個展があったり、
絵本『おばけにょうぼう』の制作に没頭したり、
「夜」の絵を描けない時期もしばらくあった。

「夜」をテーマにした絵は、結局3枚だけ描いた。
3枚目の絵を描き終えた時に
「あぁ、これではダメだ」と思った。

一枚づつの絵が完結しすぎていて
流れのある物語を受け付けない。

このまま描き続けていっても
「夜」というタイトルの個展は出来そうだけど
絵本は出来ないだろう・・・。
そのことをYさんに伝えた。

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暗礁に乗り上げる、とは
こういうことを言うのだろうか。

さて、どうするか。

時は既に2013年になっていて、
Yさんの産休はとっくにあけ、
お仕事復帰されていた。

「このまま止めてしまうのはいやです」
とYさんが言ってくださり、
また会ってお話することにした。

どういう話しの流れだったか忘れたけれど、
「龍の女の子のお話が描きたいです」
とわたしが言った。

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龍モデルを紙粘土で作りました


2012年の12月にギャラリーエフで聞いた
篠笛奏者のことさんの演奏がきっかけだった。
ことさんのアルバムタイトルは「龍の目醒め」。
ミュージックビデオの中のことさんは
赤い龍をイメージしたドレスを着ていた。
まるで龍の化身の少女のよう・・・。

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「龍の女の子」は描きたいけれど、
どうやって物語にしたらいいかわからない。
みんな、どうやって文章を書いているのだろう…。

その時、Yさんが、
某絵本作家の方がおっしゃった言葉を教えて下さった。
ある日Yさんが、
次々と魔法のようにお話をうみだす某先生に
「こんなにたくさんのお話、どうやって考えてるのですか?」
と聞いたそうだ。
するとその先生は
「ギュって考えてる」
と答えた、というのだ。

なぜか、
なぜだか、
その時に
「あぁ、そうか!ギュッと考えればいいんだ!」
と目からウロコが落ちた。
すごい秘密を教えてもらったような気持ちだった。

「一日数分でも構わないから
毎日必ず “龍の女の子” について考えてください」
とYさんからアドバイスをいただいた。

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なにかしながらチョロっと考えるのではなく、
その時はそのことだけを、
そう、それこそ「ギュッ」と考える。

次の日からさっそく実践した。

「龍の女の子」専用のクロッキー帳をつくった。
毎朝、ご飯を食べたあと、
窓辺のベッドで寝る白木(猫)の側に座って
クロッキー帳と鉛筆を握りしめて
ギュッと考えた。

ギュッと。

ギュッと。

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やがて、
「龍女の子」がどんどん変化していき、
「龍女の子」の物語が見えて来た。


まだ全然モヤのむこうにある
ぼんやりした「龍と女の子のはなし」を
口頭でYさんに聞いてもらった。

「いいと思います」

今思うと、全然良くなかったと思うけれど、
ともかく、
そこから「さくらいろのりゅう」はスタートした。

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次にYさんとお会いする時までに、
口頭で話しためちゃくちゃの話を
なんとか文章にまとめていった。
全然「絵本」を意識していない
ダラダラした長い文章だった。

文章を提出しては直し・・・・
それはそれは何回も繰り返した。

そのたびに話はどんどん変化していった。

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「そろそろラフを描いてみましょうか」
と言われるところまでやっとたどり着き、
まだまだ危うういテキストを元に
ラフを描いた。

そのラフを見たYさんが言った。
「絵はいいですね」
「でもこの絵とこの話(文章)は合わない」

うぅ・・・

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今度はこのラフをみながら
新しくお話(文体)を考えていったらどうか?
ということになった。

そこからがまた長かったように思う。

話が行き詰まったり、
ラフ(絵)が行き詰まったり。

どこかでモーゼの十戒みたいに
海が割れて道が開けたなんてことはなくて、
なんだかんだと
転んだり挫けたり匍匐前進したりしながら
「これで本番を描いてみましょう」
となったのじゃなかったか・・・。

実際、本番を描き始めてからも、
もたもたするページ展開が発覚したり、
テキストを変えることで
せっかく描いた絵がボツになったり、
もう一生終わらないんじゃなかろうか…
と思うこともあったようななかったような・・・。
(いえ、ありました・・・)

おかげさまで完成しました。
ホッ。

b-1982.jpg

デザインは、
『ドラゴンキーパー』(金の星社)
『おばけにょうぼう』(イースト・プレス)
デザインをやっていただいた椎名麻美さん。
これを言うとまた
「そんなとこ?!」と言われそうだけど、
わたしは椎名さんの「色校正」を信頼してます。
今回も良い色に仕上がりました。

そして、
長く長く長〜くお付き合い(ご指導)くださった
Yさんに感謝感謝。
あの時生まれたばかりのお子様は
もう3歳6ヶ月・・・。

時がたつのは早いですな・・・。

そんなわけで
『さくらいろのりゅう』、
無事に発売されてます。
これと言った話題性もなく、
とっても地味な絵本ですけれど、
どこかで目にすることがあったら
読んでみてください。

宜しくお願い致します。


posted by inukaki at 19:07| 絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする