ついに出ました『ネコヅメのよる』(WAVE出版)!!
いままでも、絵本や挿絵に
ちょいちょい白木を忍び込ませることはあったけど
(というかほぼ毎回描いてたけど)
まさか、まさか、
白木のことを堂々と描く日がくるとは!
ブログやインスタで人気の猫さん達が
雑誌で特集されたり、
写真集が発売されたりしてるのをみて
正直「いいなぁ……」と思っていた。
でも、白木なんて絵本よ!絵本!
自分家の、
しかもまだ生きてるコの!
もしかしたら写真集を出すよりハードル高いかも?
たしか、某グラビア癒し系アイドルが
自分と飼い犬の物語を絵本にしたことがあったはず…
あれは彼女の人気があったから成立したハナシで。
白木絵本(ネコヅメのよる)は、
描く側の人間も、出て来る猫も無名なのに、
出版できたっていうのは奇跡か!
奇跡だ!
さて、
どうしてこんな絵本が出版できちゃったのか。
それは、遡ること3年ほどまえ、
ミロコマチコさんの
絵本『てつぞうはね』が発売された頃のこと。
ミロコマチコさんの『てつぞうはね』は
今は亡き愛猫てつぞうのことを描いた絵本で、
「情熱大陸」でも紹介されて大ヒット!
これがとってもいい絵本だったもので、
猫と暮らしている絵描きたちが
それぞれ自分ちの猫を主人公にして
「白木はね」とか「ニャンキチはね」とかを描いて
「てつぞうはね」シリーズを出そう!
と100%冗談で言っていた。
で、そのミロコマチコさんのデビュー作、
『オオカミがとぶひ』の担当編集者が
このたび、白木絵本を描かせてくれた
野分編集室の筒井さん。
筒井さんも最初は
「“白木はね”、いいですね」と冗談で言っていて、
「タイトルはミロコさんに書いてもらいましょう」
とわたしも冗談で返事していた。
そんなのがしばらく続いてたある日。
「“白木はね”、そろそろ本気でやりませんか?」
と筒井さんが言った。
マジですか?
そう言われても、
わたしは物語を書けない(書きたくない)。
白木にまつわるイイ話なんてひとつも無い。
ちょうどその時、製作中の絵があった。
飯舘村の壊れたビニールハウスの中で
咲き乱れるオオイヌフグリ。
そこに猫まる猫達の絵。
そのシーンがヤマになるような絵本なら描きたい、
そう思った。
結局、ビニールハウスは無くなったんだけど。
「ネコヅメのよる」のストーリは
たいしたものではない。
あらすじを書くと
それはそのまま本筋になってしまう。
正直、わたしはネタバレに関しては
さほど気にしてないのだけれど、
(タイトルからしてネタバレ…と言われてるし)
でも、「初めて読む人だけが味わえる感情」というのも
確かにあると思うので。
なので、もったいぶってるわけじゃなくて
詳しくは書かないことに。
文章量は少ないとはいえ、
今回も「絵本の考えかた」を学んだ。
昨年出版された『さくらいろのりゅう』の時と
まったく違うアプローチの考え方だった。
『さくらいろのりゅう』の担当編集ユアサさんには
アカデミックな絵本の作り方を教えて頂いた。
お話作りに関して素人同然のわたしに、
それこそ準備体操の仕方から、
丁寧に、根気よく、順を追って教えて下さった。
筒井さんは、
どちらかと言うと「あまり考えないように」というか、
脳ではないところで
物語を“感じる”ように促してくれた。
筒井さんのアプローチに
なんとか乗っていけたのは、
ユアサさんに基礎体力をつけてもらっていたから。
わたしにとって、
「ユアサさんからの筒井さん」というコースは、
最高の流れだったように思う。
『さくらいろのりゅう』と『ネコヅメのよる』の
制作過程には共通点があって、
どちらも、物語を作ってからラフを描き、
その後にまた物語を作り直していく、
という過程があった。
文を絵にした後、
絵にした文を捨てて、
新たな文を書く、みたいな感じ。
そして、
両編集者には「言うことが的確」という共通点が。
何度もダメ出しして
何度も描き直させることが
「一緒に作品を作ること」や
「熱意のある編集者」ではない。
ダメ出しするなら、
それは「的確」であってほしい。
そのぐらいの緊張感をもって言葉にしてほしい。
それが的確なダメだしだった場合、
落ち込むことはない。
逆に「そうか!」と目から鱗が落ちる。
絵本制作は、
ラフのOKがもらえたら
描き終わるまでは、基本的に一人旅になる。
わたしはそれが好きだ。
放っておいてもらえるということは、
信用してもらえてるということ。
忘れられてるということではない、決して。
その証拠に
一人旅の途中で迷うことがあって、
「こっちとこっち、どっちがいいでしょう?」とか
「これ、どう思います?」とかを
ある日突然投げかけても、すぐに答えが帰ってくる。
「こっちにしましょう」
「それでいいと思います」
だからわたしは、
一人旅を満喫しながらも
独りじゃないという安心感をもって
絵本を描くことができる。
ふたつの異なった、
そしてとても勉強になるアプローチで
作絵の絵本を描かせてもらったのだから、
次からはスイスイ作れる!・・・かというと
全然そんなことはなく。
「身につく」ところまで到達していないのだな。
残念なことよ。
こういうことを
何度も何度も繰り返していって
そしてやっと身につくのだろうな、とは思う。
思うけど、
絵本を一冊描ききるごとに、
もう搾りかすさえ残ってません……
な気持ちになるのもホント。
描きたい物語がつぎつぎに溢れ出て来るタイプではなく、
イチから井戸を掘らないとならないタイプ。
まずは水脈をさがすところから…なのだ。
そうそう、
『ネコヅメのよる』制作メンバーは
とっても猫猫しい方々でした。
プリンティングディレクターの高蛯ウんは
ミルクちゃんという猫と暮らしている。
ある日、高蛯ウんの家の裏に捨てられていたのを
拾ったんだそうだ。
デザイナーの大島依提亜さんは
オッドアイで6本指のひゃっこさんという
妖精のような猫と暮らしている。
そのせいか、初めて原画を見てもらった時、
なんだか普通の現場と違う反応が…。
打ち合わせのちょっとした間に、
白木のアップのページをじーっと見ていた高蛯ウんが
「かわいいなぁ…」と小さな声でつぶやいていたり。
紙の説明をするときに
「猫が爪でクッてやりたくなるような紙」と大島さん。
紙選びも猫目線だったり。
帯を誰に書いてもらうかという話になり、
筒井さんがイタコになって
「白木に書いてもらおう」ということになったり。
ああ、なんてこった・・・
みんな 変で
みんな いい。
筒井さん家にはまだ猫がいないけど、
近いうちに猫がやってくるんではないか…
そうだといいな…と勝手に思っている。
WAVE出版のハマモトさん家は犬だけど、
WAVE出版では猫本をいろいろ出していて、
サイン本を作りにいった時に
『店主は、猫』という台湾の看板猫本をいただいた。
『ネコヅメのよる』は
その道のプロの方々で、
しかも猫好き動物好きの方々とつくることが出来て、
すごく幸せだった。
「絵本」よりもう一段別の何かに(ナニに?)
なったような気さえする。
この流れで
この時期に
この人達と作れて
本当にほんとーに幸せ。
ね、白木!
ワンワン!
『ネコヅメのよる』
町田尚子/著
1400円+税
WAVE出版