2016年05月29日

絵本『ネコヅメのよる』


ついに出ました『ネコヅメのよる』(WAVE出版)!!
いままでも、絵本や挿絵に
ちょいちょい白木を忍び込ませることはあったけど
(というかほぼ毎回描いてたけど)
まさか、まさか、
白木のことを堂々と描く日がくるとは!

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ブログやインスタで人気の猫さん達が
雑誌で特集されたり、
写真集が発売されたりしてるのをみて
正直「いいなぁ……」と思っていた。

でも、白木なんて絵本よ!絵本!
自分家の、
しかもまだ生きてるコの!

もしかしたら写真集を出すよりハードル高いかも?

たしか、某グラビア癒し系アイドルが
自分と飼い犬の物語を絵本にしたことがあったはず…
あれは彼女の人気があったから成立したハナシで。
白木絵本(ネコヅメのよる)は、
描く側の人間も、出て来る猫も無名なのに、
出版できたっていうのは奇跡か!
奇跡だ!

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さて、
どうしてこんな絵本が出版できちゃったのか。
それは、遡ること3年ほどまえ、
ミロコマチコさんの
絵本『てつぞうはね』が発売された頃のこと。

ミロコマチコさんの『てつぞうはね』は
今は亡き愛猫てつぞうのことを描いた絵本で、
「情熱大陸」でも紹介されて大ヒット!

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これがとってもいい絵本だったもので、
猫と暮らしている絵描きたちが
それぞれ自分ちの猫を主人公にして
「白木はね」とか「ニャンキチはね」とかを描いて
「てつぞうはね」シリーズを出そう!
と100%冗談で言っていた。

で、そのミロコマチコさんのデビュー作、
『オオカミがとぶひ』の担当編集者が
このたび、白木絵本を描かせてくれた
野分編集室の筒井さん。

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筒井さんも最初は
「“白木はね”、いいですね」と冗談で言っていて、
「タイトルはミロコさんに書いてもらいましょう」
とわたしも冗談で返事していた。

そんなのがしばらく続いてたある日。
「“白木はね”、そろそろ本気でやりませんか?」
と筒井さんが言った。

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マジですか?


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そう言われても、
わたしは物語を書けない(書きたくない)。
白木にまつわるイイ話なんてひとつも無い。

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ちょうどその時、製作中の絵があった。
飯舘村の壊れたビニールハウスの中で
咲き乱れるオオイヌフグリ。
そこに猫まる猫達の絵。

そのシーンがヤマになるような絵本なら描きたい、
そう思った。

結局、ビニールハウスは無くなったんだけど。

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「ネコヅメのよる」のストーリは
たいしたものではない。
あらすじを書くと
それはそのまま本筋になってしまう。

正直、わたしはネタバレに関しては
さほど気にしてないのだけれど、
(タイトルからしてネタバレ…と言われてるし)
でも、「初めて読む人だけが味わえる感情」というのも
確かにあると思うので。

なので、もったいぶってるわけじゃなくて
詳しくは書かないことに。

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文章量は少ないとはいえ、
今回も「絵本の考えかた」を学んだ。

昨年出版された『さくらいろのりゅう』の時と
まったく違うアプローチの考え方だった。

『さくらいろのりゅう』の担当編集ユアサさんには
アカデミックな絵本の作り方を教えて頂いた。
お話作りに関して素人同然のわたしに、
それこそ準備体操の仕方から、
丁寧に、根気よく、順を追って教えて下さった。

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筒井さんは、
どちらかと言うと「あまり考えないように」というか、
脳ではないところで
物語を“感じる”ように促してくれた。

筒井さんのアプローチに
なんとか乗っていけたのは、
ユアサさんに基礎体力をつけてもらっていたから。
わたしにとって、
「ユアサさんからの筒井さん」というコースは、
最高の流れだったように思う。

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『さくらいろのりゅう』と『ネコヅメのよる』の
制作過程には共通点があって、
どちらも、物語を作ってからラフを描き、
その後にまた物語を作り直していく、
という過程があった。

文を絵にした後、
絵にした文を捨てて、
新たな文を書く、みたいな感じ。

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そして、
両編集者には「言うことが的確」という共通点が。

何度もダメ出しして
何度も描き直させることが
「一緒に作品を作ること」や
「熱意のある編集者」ではない。

ダメ出しするなら、
それは「的確」であってほしい。
そのぐらいの緊張感をもって言葉にしてほしい。

それが的確なダメだしだった場合、
落ち込むことはない。
逆に「そうか!」と目から鱗が落ちる。


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絵本制作は、
ラフのOKがもらえたら
描き終わるまでは、基本的に一人旅になる。
わたしはそれが好きだ。
放っておいてもらえるということは、
信用してもらえてるということ。
忘れられてるということではない、決して。

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その証拠に
一人旅の途中で迷うことがあって、
「こっちとこっち、どっちがいいでしょう?」とか
「これ、どう思います?」とかを
ある日突然投げかけても、すぐに答えが帰ってくる。

「こっちにしましょう」
「それでいいと思います」

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だからわたしは、
一人旅を満喫しながらも
独りじゃないという安心感をもって
絵本を描くことができる。

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ふたつの異なった、
そしてとても勉強になるアプローチで
作絵の絵本を描かせてもらったのだから、
次からはスイスイ作れる!・・・かというと
全然そんなことはなく。

「身につく」ところまで到達していないのだな。
残念なことよ。

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こういうことを
何度も何度も繰り返していって
そしてやっと身につくのだろうな、とは思う。
思うけど、
絵本を一冊描ききるごとに、
もう搾りかすさえ残ってません……
な気持ちになるのもホント。

描きたい物語がつぎつぎに溢れ出て来るタイプではなく、
イチから井戸を掘らないとならないタイプ。
まずは水脈をさがすところから…なのだ。

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そうそう、
『ネコヅメのよる』制作メンバーは
とっても猫猫しい方々でした。

プリンティングディレクターの高蛯ウんは
ミルクちゃんという猫と暮らしている。
ある日、高蛯ウんの家の裏に捨てられていたのを
拾ったんだそうだ。

デザイナーの大島依提亜さんは
オッドアイで6本指のひゃっこさんという
妖精のような猫と暮らしている。

そのせいか、初めて原画を見てもらった時、
なんだか普通の現場と違う反応が…。

打ち合わせのちょっとした間に、
白木のアップのページをじーっと見ていた高蛯ウんが
「かわいいなぁ…」と小さな声でつぶやいていたり。

紙の説明をするときに
「猫が爪でクッてやりたくなるような紙」と大島さん。
紙選びも猫目線だったり。

帯を誰に書いてもらうかという話になり、
筒井さんがイタコになって
「白木に書いてもらおう」ということになったり。

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ああ、なんてこった・・・

みんな 変で
みんな いい。

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筒井さん家にはまだ猫がいないけど、
近いうちに猫がやってくるんではないか…
そうだといいな…と勝手に思っている。

WAVE出版のハマモトさん家は犬だけど、
WAVE出版では猫本をいろいろ出していて、
サイン本を作りにいった時に
『店主は、猫』という台湾の看板猫本をいただいた。

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『ネコヅメのよる』は
その道のプロの方々で、
しかも猫好き動物好きの方々とつくることが出来て、
すごく幸せだった。
「絵本」よりもう一段別の何かに(ナニに?)
なったような気さえする。

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この流れで
この時期に
この人達と作れて
本当にほんとーに幸せ。

ね、白木!

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ワンワン!


『ネコヅメのよる』
 
町田尚子/著
1400円+税
WAVE出版


posted by inukaki at 20:55| 絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする